高度な技術と最高の専門的知識によって高難度肝胆膵手術を!
肝胆膵手術は腹部手術の中で最も難易度が高い手術領域です。特に膵手術の手術手技および周術期管理の発達により手術関連死亡の報告は2~3%となってきていますが、術後合併症の発生率は30~50%といまだ高率です。膵臓手術症例数が年30例の一定数以上の手術を行っている施設では合併症や術死率が低い傾向にあると言われています。和歌山県立医科大学外科学第2講座では年間80~100例(図1)の膵臓手術を実施しており、また肝臓手術に関しては年間約100例(図2)の手術を実施しており、和歌山県下では日本肝胆膵外科学会が定める唯一の修練施設A(肝胆膵高難度手術が50例/年以上実施)の認定施設です。
現在、教室では以下の5名の高度技能専門医が在籍しており、高難度肝胆膵手術を安全かつ迅速に行っております。また、症例に応じて、体の負担の少ない低侵襲手術(=腹腔鏡下手術;大きくお腹を切らずに、お腹に5~6か所の穴をあけて行う手術)を実施しています。更には、近年保険診療として認められたロボット支援下肝切除・膵切除手術も開始しました。
全国有数の肝胆膵外科のハイボリュームセンターの教室として今後ますます高難度肝胆膵外科の発展に貢献する使命があります。
また、外科治療では治療困難な、進行した状態の病気に対しても、臨床研究・治験を通じて、最新の治療を提供するように努めています。
和歌山県立医科大学 第2外科
膵臓手術実績
日本肝胆膵外科学会
肝胆膵高難度手術修練施設
高度技能専門医 5名
図1:和歌山県立医科大学
外科学第2講座での膵臓手術実績
年間100例以上の手術を施行し、近年では、低侵襲(腹腔鏡下、ロボット支援下)手術の割合も増加しています。
和歌山県立医科大学 消化器外科
肝臓手術実績
図2:和歌山県立医科大学
外科学第2講座での肝臓手術実績
近年では、年間100件以上の手術を実施し、その約66%の症例は低侵襲(腹腔鏡下)手術で行われています。
高度技能専門医
川井 学教授 上野 昌樹准教授 岡田 健一講師 速水 晋也講師 北畑 裕司講師
肝臓外科:
安全かつ確実な腹腔鏡下肝切除
腹腔鏡下肝切除
教室では、2008年より肝部分切除に対して腹腔鏡手術を適応してきましたが、2016年度の診療報酬改訂にて、全肝切除術式(胆道再建を伴わない)に対する鏡視下手術が適応できるようになりました。2017年度は、73例(胆道再建を伴わない肝切除)中、43例(58.9%)に鏡視下肝切除を実施しました。また、高難度の肝切除を鏡視下に行うにあたり、当科では血管造影手技とICG蛍光観察システムとのコンビネーションで明瞭に術中区域同定を可能とする方法(図)を考案しました(Ueno M et al. Surg Endosc 32, 1051-1055, 2018)。
腹腔鏡下膵体尾部切除
保険適応後、膵体部癌に対しても適応を選定して、積極的に腹腔鏡下膵体尾部切除を行っております。
【図:腹腔鏡下S8亜区域切除】
ICG蛍光観察によりS8区域が明瞭に同定されている。
膵癌の切除限界に挑む
(切除境界膵癌と切除不能膵癌)
膵癌に対して、さまざまな治療法により、予後の改善が図られていますが、今なお、外科的治療のみが唯一の根治・治癒の期待できる治療法です。しかし、膵周囲には重要な血管が存在するため、膵癌がこれら主要血管に浸潤し、根治切除が得られないことも多く存在します。現在、切除境界膵癌に対して術前治療を行うことで、外科的切除の切除率および根治切除の向上によって切除境界膵癌の予後の向上に繋がる可能性があります。ゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法(GnP療法)の安全性、有効性を確認する「Borderline resectable 膵癌に対する術前化学療法としてのGnP療法の安全性、有効性に対する第I相臨床試験」を施行し、その有効性と安全性を確認報告(Anticancer Res. 2017)しました。そして本教室が主導し、2016年10月から「BR膵癌に対するGnP療法の生存期間に対する有効性・安全性に関する多施設共同第Ⅱ相試験」(Oncology. 2017)を行い、難易度の高い肝胆膵手術の術後合併症のゼロ化を目指すだけでなく、膵癌の生存率向上にも努めます。
また、切除不能膵癌に対して抗がん剤治療を行い、縮小させて切除可能となる可能性もあります。私たちはこのような膵癌に対しても一般病院では切除が困難である血管合併切除再建を安全に行い、積極的に切除不能膵癌に対する手術を行っております。
膵癌におけるワクチン療法
和歌山県立医科大学外科学第2講座では、癌治療用ワクチンの開発も柱の一つです。本邦初の癌に対する樹状細胞ワクチンの治験として、ゲムシタビン+アブラキサン治療に不応・不耐の切除不能膵癌患者を対象とした医師主導治験を2017年3月より開始しております。治験への参加は手術可能・手術不能・再発症例問わず、切除不能膵癌と診断された時点あるいは化学療法実施中から可能です。
国内初の膵癌に対する樹状細胞免疫療法の治験、また和歌山初の創薬としてワクチン製剤の承認を目指します。