研究紹介

研究の概要

Research

外科学の研究領域は広範囲にわたり、Basic scienceである細胞生物学および分子生物学のめざましい進歩に歩調を合わせるべく、当教室における研究内容も変遷してきました。
従来より、私たちは外科腫瘍学の研究を中心に基礎医学と臨床医学のTranslational researchを目指してきました。すなわち、癌免疫療法として米国NIH外科が開発した活性化リンパ球を用いた養子免疫療法を臨床応用するために、種々のサイトカインで併用刺激する試みや、固相化抗CD3抗体および固相化fibronectinの併用の基礎実験を行ってきました。

さらに、近年、多くの腫瘍抗原がペプチドのレベルで同定され、私たちも消化器癌で発現している癌特異抗原のひとつであるCEAに対する特異的免疫応答を解析し、腫瘍抗原ペプチドを用いた新しい癌ワクチン療法の開発をしました。そして現在、樹状細胞を併用した癌ワクチン療法の医師主導治験を開始したところです。

癌化学療法では、「患者個別の癌治療」の一環として、個々の症例に応じた化学療法を行うために、抗癌剤感受性試験をルーチンに行ってきましたが、現在は、抗癌剤感受性に関わる多くの遺伝子を解析するDNAマクロアレイやDNAチップの研究を準備中で、遺伝子発現からみた新しい抗癌剤感受性試験を開発する予定です。

遺伝子治療の研究も盛んで、従来より米国NIHとの共同研究でレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療の基礎研究を展開してきましたが、癌研究会との共同研究でアデノウイルスベクターの研究を開始し、現在、腫瘍組織特異的に目的遺伝子が発現するシステムを確立しました。また、複数の大きな遺伝子を同時に安定して導入可能なAVIPOX virusを用いた新世代のベクターに関する研究も行ってきました。現在では、将来の臨床応用に備えて、「抗がんウイルス療法」の研究へと舵取りし、他施設との共同研究を継続中です。

そして、現在の体制では、外科臨床研究に力を注いでいます。外科臨床として、近年の消化器癌の増加に対応するため、日々の手術および周術期の患者管理に真剣に取り組んでいます。外科学教室独自の臨床研究をスタートさせるために、手術症例の詳細なデータベースの作成を開始しました。
また、とくに、膵疾患が著しく増加し、膵癌に対する門脈合併切除術などの拡大手術のみならず、Borderline malignancyである膵嚢胞性疾患に対する機能温存を目指した縮小手術など患者の病態にあわせた外科手術の確立を目標としています。そして、下大静脈などの大血管に浸潤した症例に対する体外循環下の他臓器・血管合併切除術などの高難度手術に対しても積極的に取り組んでいます。
今後、できるだけ多くの外科治療における臨床試験(randomized controlled trail: RCT)を行っていく予定です。

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