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治療方針-食道・胃

食道癌治療指針

概略:

2012年4月に日本食道学会が食道癌診断・治療ガイドライン(改訂第3版)を発刊している。我々の教室ではそのガイドラインをふまえながらより具体的な診療指針を作製し、それに基づいて診療を行っている。
現在、上部消化管内視鏡、超音波内視鏡、マルチスライスCTおよびFDG-PETなどにより癌の進行度を正確に診断し、以下の基準により治療方針を決定しているが、合併疾患、併存疾患等によりその方針が変更されることがある。

治療指針

主病巣の深達度が粘膜層(T1a)までリンパ節転移を認めない場合

内視鏡的粘膜切除術(ESD)を第1選択とする。ESDの切除標本の病理検査にてm1(粘膜上皮)ないしm2(粘膜固有層)であれば経過観察。m3(粘膜筋板)に達していた場合、明らかな脈管浸襲を認めない場合は経過観察とする。脈管侵襲を認める場合は胸腔鏡下食道切除、リンパ節郭清を行う。

主病巣の深達度が粘膜下層(T1b)まで達する場合でリンパ節転移を認めない場合

胸腔鏡下食道切除、リンパ節郭清術を行う。術後の病理検査でリンパ節転移を認めた場合は術後に補助化学療法を行う。

主病巣の深達度が筋層(T2)あるいは外膜(T3)まで達する場合、あるいはリンパ節転移を認める場合 (Stage II, IIIの場合)

術前に抗癌剤治療を行い、その後、食道切除、3領域リンパ節郭清を行う。

主病巣が外膜を越え、他臓器(気管や大動脈)に浸潤する場合

化学放射線療法を行う。著明な腫瘍縮小を認め根治切除可能と判断される場合、手術を行うこともある。

遠隔転移(肺転移、肝転移、骨転移など)を認める場合

抗癌剤治療を行う。また状況によっては放射線治療を追加したり、ステント挿入、腸瘻、胃瘻造設術などを行うこともある。標準治療が無効な症例に対してはペプチドワクチン療法の臨床試験による治療開発を行っている(ただし現在は症例登録期間が終了している)。

治療内容の補足説明

胸腔鏡下食道切除術

我々の教室では2009年より完全腹臥位胸腔鏡下食道切除術を行っている。体位は腹臥位として、右側胸部の5カ所にトロッカーを挿入し、炭酸ガス気胸下で手術を行っている。
この方法は従来の開胸(小開胸手術)と異なり、痛みが少なく、離床が早い上、術後の呼吸機能低下が少ないなど多くの利点があり、結果的に合併症減少に寄与している。現在は胸膜癒着がない外膜浸潤までの食道癌を適応としている。ただし、胸部上部の巨大な腫瘍を伴う場合や化学放射線療法後の症例に対しては行っていない。

患者の体位は腹臥位。術者、助手は同一モニターを見ながら手術を行う。

化学療法(抗癌剤治療)

従来はシスプラチンと5-FUを併用するFP療法が食道癌の標準化学療法であるが、近年、これにドセタキセルを加えた3剤併用のDCF療法が行われるようになってきた。しかしDCF療法は副作用がかなり強く出ることが問題である。我々は副作用を軽減する目的で分割して投与する分割DCF併用療法の臨床研究を行っている。この方法はFP療法に比較し有効率(腫瘍縮小効果)が明らかに優れており、骨髄抑制以外の副作用が比較的軽度であることが明らかになった。現在はこの方法をStage II, IIIの術前化学療法に応用し、良好な成績が得られている。

化学放射線療法

当科では放射線科と共同で化学放射線療法を行っている。放射線治療の方法は3次元照射法(3D)で行っており、それにシスプラチンと5-FUを併用している。放射線照射量はその目的により適宜変更しているが、根治照射の場合は50Gy以上を原則照射している。

周術期管理

食道癌手術は消化器外科領域では最も負担の大きな手術であるため、術後合併症の頻度も高いと言われている。したがって当院では従来から他の診療科と共同で周術期に術後合併症を予防する様々な取り組みを行っている。そのひとつが周術期リハビリプログラムである。当院リハビリ科の全面的協力を得て食道癌手術に特化した周術期リハビリプログラムを作成し、術前より開始し、手術翌日から退院まで心肺機能強化訓練、筋力トレーニング、呼吸理学療法、術後座位保持、歩行訓練(術後1日目より)などを行い、早期離床を達成している。また嚥下リハビリも行っており食道癌術後の嚥下障害に対応している。その他、集中治療(ICU)、口腔ケア(口腔外科)、術後疼痛管理(麻酔科)、心肺機能評価、治療(循環器内科、呼吸器内科、呼吸器外科)、頭頸部機能スクリーニングと評価(耳鼻咽喉科)など他の多くの診療科のバックアップを得て総合的に食道診療を行っている。
以上により最近5年間(2007年-2011年)におこなった193例の術後合併症は呼吸器合併症4.1%、縫合不全4.1%、吻合部狭窄2%、反回神経麻痺(永久)1%と全国平均に比較しても少なくなっている。

胃癌治療指針

概略

癌の占拠部位、大きさ、組織型、深達度および転移の有無などを的確に術前診断し、癌の進行度に応じた治療を行っています。胃癌学会発刊の「胃癌治療ガイドライン」を基本として、これをさらに発展させた独自の胃癌治療ガイドラインを作製し、それに基づいて治療選択を行っています。しかしながら、合併疾患、併存疾患をお持ちの患者さんでは、進行度と全身状態のバランスを考えて、治療方法を選択します。

早期胃癌

図にしたがって治療方針を決定する。

進行胃癌

図にしたがって治療方針を決定します。

Ⅰ.治癒切除が得られる場合

  1. 定型手術:2/3以上の胃切除+D2郭清
  2. 非定型手術
     拡大手術:他臓器合併切除やD3郭清などをともなう2/3以上の胃切除

1.定型手術

<U領域>

  • 噴門側胃切 :N0で病変がU領域に限局する分化型、深達度T2まで
  • 全摘 :上記以外

<M、 L領域>

  • 幽門側胃切除 :口側切離線が噴門より肛門側であり、リンパ節No1、2、4sa、10、11にあきらかな転移を認めない場合
  • 全摘 :上記以外

2.拡大手術

  • 胃切除範囲は定型手術に準ずる
  • 他臓器合併切除、D2以上のリンパ節郭清

<他臓器合併切除>

  1. 適応
    原則として切除可能な臓器への浸潤を認める場合で根治度Bが期待できる場合は積極的に合併切除を行います。手術浸襲が大きいため術前の併存疾患により適応にならない場合もあります。
  2. 合併切除
    1. 脾摘 :上部進行胃癌
          リンパ節No4saに明らかな転移を認める場合
          リンパ節No10の郭清が必要な場合
      ※術前にNo.10リンパ節転移を認めた場合は、術前化学療法を行う場合がある。
    2. 横行結腸切除
    3. 膵尾側切除、膵体尾部切除
    4. その他の臓器の合併切除(肝、副腎、横隔膜など)

<大動脈周囲リンパ節郭清>

  1. 適応

    大動脈周囲リンパ節転移を認め、他に非治癒因子がない場合
    ※通常、術前に大動脈周囲リンパ節転移を認めた場合は、術前化学療法を行います。
    ※手術浸襲が大きいため術前の併存疾患により適応にならない場合もあります。

  2. 郭清範囲について
    大動脈周囲リンパ節(No16)郭清範囲
    16a2 inter、latero、16b1 inter、latero

3.審査腹腔鏡

  1. 適応
    術前診断にて漿膜浸潤を疑う胃癌、大型3型・4型胃癌
  2. 目的
    腹膜播種、腹腔洗浄細胞診の検索

4.食道浸潤胃癌の術式選択

  • 食道浸潤距離:3cm以下の場合
    :経腹的に横隔膜切開によるapproach
  • 食道浸潤距離:3cm以上の場合
    :左開胸(第7あるいは第6肋間)開腹によるapproach

※術前に下縦隔リンパ節転移を認めた場合は、術前化学療法を行う場合があります。

 

5.再建術

  1. 幽門側胃切除
    Billroth I あるいは Roux-en Y 法
  2. 胃全摘
    R-Y法
  3. 噴門側胃切除
    原則として空腸間置術、残胃が充分大きい場合食道胃吻合

6.術前化学療法 (Neoadjuvant Chemotherapy)

  1. 目的
    a)  Down staging
    b) 手術が及ばない領域のmicrometastasisの抑制
    c) 臓器温存
    以上により治癒切除率の向上、予後の向上を目的とします。
  2. 適応 (臨床研究で行う場合があります)
    a)  腹腔洗浄細胞診陽性症例
    b) 大型3型胃癌、4型胃癌 
    c) 術前画像診断でbulky N2もしくは大動脈周囲リンパ節、3群のリンパ節転移が疑わる場合
    d) 主要血管(celiac artery、common hepatic artery など)や膵頭部浸潤や合併切除不可能な臓器への浸潤を有する場合T4b症例

7.術後補助化学療法(Adjuvant chemotherapy)

  1. 目的:
    再発抑制とそれによる予後向上を目的とします。
  2. 適応:
    胃癌取扱い規約第14版によるpStageII, III症例(ただしpT1およびT3(SS)/N0症例を除く)
  3. 抗癌剤:
    S-1 (術後1年間服用)

Ⅱ.治癒切除が得られない場合

  1. 肝転移
    1. 単発転移
      原発巣も定型手術で治癒切除が得られる場合:胃切除+肝切除
      上記以外:化学療法(+姑息切除)
    2. 多発転移
      化学療法(+緩和手術)
      緩和手術は原発巣による出血、狭窄などの切迫した症状を改善するために行います。
  2. 腹膜転移
    1. 明らかな腹膜結節がなく(洗浄)細胞診のみ陽性の場合
      術前化学療法。その後、再度、審査腹腔鏡を行い、細胞診が陰性化すれば、定型手術。その後、術後化学療法
    2. 明らかな腹膜結節を認める場合
      化学療法
  3. 広範なリンパ節転移(Bulky N3、遠隔リンパ節転移)
    • 化学療法→縮小を認めれば根治手術
    • 緩和手術

III. 臨床研究:研究と臨床の架け橋

同意のいただけた患者さんに対しては、より良い新しい治療法、診断法などの開発のために臨床研究に積極的に参加して頂き、JCOGなどの国内有数の大規模臨床研究にも参加して頂いています。